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【環球異見】トヨタ・リコール問題

 トヨタの大量リコールはさまざまな車種にまたがった米国を発端とし、欧州、そして日本へとあっという間に拡大し、日本の旗艦企業ともいえるこの世界最大の自動車メーカーに、深刻な危機となって襲いかかっている。トヨタが長年かけて築き上げ、米国などの顧客の間で半ば神話化していた品質や安全への信頼性はなぜ、こうももろく崩れ去ってしまったのか。米英紙は、社説や検証記事で容赦ないメスを入れている。

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 ▼ウォールストリート・ジャーナル・アジア版(米国)

 ■経営の日本集中で情報断絶

 11日付米紙ウォールストリート・ジャーナル・アジア版は業界関係者の話などを基に、トヨタの大量リコール問題の背景に、同社の「隠蔽(いんぺい)体質」があったとする検証記事を掲載した。

 同紙はこの中で、1月にトヨタ社幹部が訪米した際に、同社がアクセルペダルの欠陥を「1年以上にわたり認識していた」事実を、米道路交通安全局(NHTSA)に伝えていたとし、NHTSA関係者がそれに「激怒」、トヨタはその2日後に230万台のリコールを行った、と報じた。

 また、急加速などの問題は2004年には米国内で表面化していたものの、その原因は数年にわたり判明せず、08年12月に欧州でペダルの欠陥が発見された際も「(トヨタは)米国法人に警告すらしなかった」と伝え、同社の危機意識の薄さを強く批判している。

 そして、海外で相次ぎ判明した問題への対応が遅れた理由として、「(海外事業を含む)経営の大半が日本の本社により行われている」ためだとし、海外の現地法人にはリコールの決定権もない、と指摘した。

 そのうえで「トヨタ(のグループ)内では情報の断絶が起きている」と断じ、「(一連の問題が発生した際に)ワシントン(の米法人)は米政府に説明するための情報すら持ち合わせていなかった」などとして、同社の経営体制のあり方に疑問を投げかけている。

 また、NHTSAの元職員2人をトヨタが雇用、そのうちの1人は、NHTSAがトヨタ車の調査を行った際にはトヨタ側の窓口になっていたともしており、NHTSAとトヨタの関係をも暗に批判している。NHTSAが人員不足などから、調査の際にメーカーが提供する情報などに依存し過ぎていると、米当局側の問題にも言及している。(黒川信雄)

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 ▼ニューヨーク・タイムズ(米国)

 ■あまりにのろく、透明性に欠けた

 6日付米紙ニューヨーク・タイムズは社説で、顧客の安全上の苦情が相次いだにもかかわらず、トヨタは「問題を率直に認めることをせずに、事態を悪化させてきた」と指摘し、リコール問題の根底にある対応の不手際を批判している。

 自動車メーカーはリコールと無縁ではない。ただ、不意に急加速するというトヨタ車への苦情は数千件に上り、他メーカーと比べて突出してきた。過去10年間で18人がトヨタ車の急加速事故で死亡したという。

 にもかかわらず、トヨタの対応は、「あまりにのろく、透明性に欠けるものだった」というのである。トヨタは2007年、アクセルペダルに引っかかりやすいフロアマットを急加速の原因と認定、昨年8月にカリフォルニア州で4人が死亡した衝突事故の後も、その姿勢を変えなかった。

 ところが、同社は遅くとも08年の時点で、いくつかの車種のアクセルペダルの不具合を把握していた、と社説は断じ、しかも、「安全上の問題ではないと判断し、昨年末まで当局に言わなかった」としている。

 社説は、「安全当局の圧力を受けて」先月、8車種のリコールと販売、生産の一時停止を発表、「問題を解決した」とするトヨタを「当然、多くの消費者が疑っている」と見ている。

 社説は特に、「急加速と電子制御装置とは無関係」という同社の断定には懐疑的で、「(当局が着手した電子制御装置の調査の)答えを、ドライバーは知る必要がある」としている。

 「トヨタの前途には重大な仕事が山積している」。品質管理だけではない。問題の評価法を点検、苦情に注意を払い、当局に必要な報告をする。問題があれば「顧客に遅滞なく伝えなければならない」。実に当たり前のことなのだが…。(ワシントン 渡辺浩生)

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 ▼フィナンシャル・タイムズ(英国)

 ■「制御不能の加速」に突き進んだ

 トヨタのリコール問題について、英紙フィナンシャル・タイムズは5日付社説で、「トヨタは車作りと顧客への情報開示両方の良質さを失った」とし、無謀なまでの成長戦略が企業の信頼を壊したと指摘した。

 社説は、アクセルペダルの不具合に引っ掛け、「制御不能の加速」が問題の背景にある、と表現した。

 過去10年でトヨタは年間生産台数を50%増やして1000万台に乗せ、世界一の自動車メーカー、米ゼネラル・モーターズ(GM)を追い抜いた。しかし、同じ部品を多くの異なるモデルに使う生産効率化を進めたことで、トヨタが誇りにしていた技術の高さを損ねたと、社説は分析する。

 トヨタは昨年11月以降、アクセルペダルの不具合によって、北米で昨年の販売台数の3倍以上の600万台をリコール対象車とし、欧州でも最大180万台をリコールする見通しだ。

 リコールは自動車業界にはつきものとはいえ、「トヨタは広報対応に失敗し、大惨事を招いた」とし、豊田章男社長は顧客の不安を和らげるために記者会見するのが遅過ぎたと批判。企業トップによる情報開示は日本流ではないかもしれないが、グローバル企業にはそんな言い訳は通用しないとバッサリ切り捨てた。

 さらに、問題なのは米国で2005年に200万台以上のリコール対象車があったにもかかわらず、対応が遅れたこと。ハイブリッド車「プリウス」のブレーキに不具合があったことも明らかになり、トヨタは欠陥を十分に開示していないとの疑念を増幅させた。

 リコールなどによる損失は1800億円と予測される中でトヨタは収益予測を上方修正しており、「日本には“ずうずうしい”という言葉がないのかもしれない」と社説は皮肉った。(ロンドン 木村正人)

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